Abstract:
動詞は「テイル」及び「タ」形で時制を表示すると一般には言われているが、時制表示をしていない場合もある。それは、動詞が動詞らしさを失った「形容詞的動詞」の「テイル」「タ」形である。この「形容詞的動詞」は形態的には動詞であるにもかかわらず、意味的な属性や連体修飾要素として典型的な形容詞と同様の役割を果たしている。これは日本語では「形容詞的動詞」以外「形状動詞」とも呼ばれ、多くの言語や欧語文法では「分詞」と言われている動詞の用法である。ある意味、動詞の形容詞らしさが現れているとも言えるこの用法には「乾いた手」「ぬれた傘」などのように後置された名詞の属性を表す特徴も持ち、この場合は時制の接尾辞となる「タ」が付いている動詞は役割として形容詞の振る舞いをしている。
本稿では、現代日本語におけるこの興味深い現象を対象とし、主に連体修飾の「テイル」・「タ」形に注目しつつ、動詞の形容詞的な用法について考察する。また、形容詞的動詞としては使用が可能・不可能な動詞を分析し、図表を作成する。